2012年9月の記録

2012年9月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:4711ページ
ナイス数:753ナイス

防衛省 (新潮新書)防衛省 (新潮新書)感想
防衛省そのものだけではなく、戦後日本の「軍事」政策の歴史を概説した内容になっている。民主制であろうと「軍事」を毛嫌いしちゃだめで、だからこそ一人ひとりが基本的なことを知ってほしいという著者の姿勢は納得できる。著者は、記者として長年「軍事」を担当してきただけに知識は豊富である。ただ、一冊の本としてみたら、本書はまとまりに欠けるような気がする。
読了日:9月30日 著者:能勢 伸之
さいえんす? (角川文庫)さいえんす? (角川文庫)感想
同じ工学部しかも電気工学系と言うことで科学に関する感覚に似たところがあるような気もする。特に、数学に対するとらえ方は非常に共感できる。ただ、いくつかの点で納得できないところもあった。まあ、まったく同じ考えの人の文章を読むより刺激があって好きだけど。
読了日:9月29日 著者:東野 圭吾
花の鎖花の鎖感想
梨花、美雪、紗月という3人の女性の物語が並行して描かれていく。名前がきれいだなと思ったら、やっぱりそこに仕掛けがあったんだ。ネタばれになるから詳しく書けないけど、構成の妙を感じた。人間描写に深みがあり、胸が温かくなるような読後感が残った。「告白」を超える作品を書きたいという著者の願いが、今後の作品で実現できると思えるような作者の成長を感じた。
読了日:9月28日 著者:湊 かなえ
中国は東アジアをどう変えるか ‾ 21世紀の新地域システム (中公新書 2172)中国は東アジアをどう変えるか ‾ 21世紀の新地域システム (中公新書 2172)感想
21世紀に入り、経済的・軍事的に台頭している中国が東アジア(一般的に東南アジアと言った方がふさわし気がするエリア)に及ぼす影響を論じている。地政学、歴史などについて資料をきちんとしていて、学問的にはしっかりとした内容だと思う。特に、中国の海外援助の実態や「チャイニーズ」と中国政府の意識の違いは参考になった。ただ、中国政府がどう進もうかについて書かれていないのが気になる。特に、尖閣諸島の問題がホットな時期なので、その点を知りたくて手に取る人も多いと思うだけど。
読了日:9月27日 著者:ハウC・S
無菌病棟より愛をこめて無菌病棟より愛をこめて感想
お気に入り小説家の白血病闘病記。入院直後の筆致がとげとげしく違和感があった。だんだん落ち着いてくると、病気になったことに対する作者のいらだちが表れていたんだと思うと、かえって共感できるようになった。それにしても、著者の症状でかなり軽い方だとすると、平均的な患者さんの苦しみは相当なものなんだろうなあ。弟さんのドナー日記も付随していたけど、自分が経験するとしたらせめてこちらにしたいと思う。いや、どちらも読書経験だけで済ませたいものだ。
読了日:9月26日 著者:加納 朋子
テルマエ・ロマエV (ビームコミックス)テルマエ・ロマエV (ビームコミックス)感想
ギャグ漫画の常としてこの作品も長編ストーリー化している。初めはパワーダウンを感じたけど。この伊藤温泉編では以前のパワーを取り戻したようだ。さつきのおじいさんやハナコなどいいキャラはいるから伊藤温泉の話を続けてほしいけど、やっぱりルシウスが活躍すべき場所は古代ローマだと思うので、次巻以降も期待しちゃう。さつき(ディアナ)といい関係になったけど、これでおしまいだとするとちょっと切ない。
読了日:9月25日 著者:ヤマザキマリ
浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)感想
メインタイトルより副題の「仏教宗派の謎」の方が内容に近い感じ。浄土真宗だけではなく、日本の仏教の各宗派についての基礎知識が書かれていた。浄土真宗に特化するよりも参考になったと思う。著者はオウムの件で色々と評判はあるけど、本書を読む限りまっとうな学者と言う気がした。本書が読みやすかったから他の本も読んでみようかな。後、メインタイトルの答えが最終章にあったけど、まあ想定内の理由だった。
読了日:9月24日 著者:島田 裕巳
カラマーゾフの妹カラマーゾフの妹感想
カラマーゾフの兄弟」の続編という位置づけだけど、原作の雰囲気を壊していない。しかも、原作をただなぞるだけではなく、新たな仕掛けを施して物語を広げているし、遊び心もある佳作だと思う。受賞に対する賛否はあったけど、審査員が作品の質については文句を言わないのも納得できる。この作品の出来が良いので原作の凄さを再認識した。原作→本作の順序で読み直したい。個人的にはトロヤノフスキーにもう少し活躍して欲しかった気がする。
読了日:9月21日 著者:高野 史緒
路地恋花(4) <完> (アフタヌーンKC)路地恋花(4) <完> (アフタヌーンKC)感想
最終巻だけど、オムニバスに近い構成なので、かっちりと落ちはなく終わってしまった。ただ、いつでも路地に行けば登場人物たち会えそうな気にさせてくれるから、こういう終わり方もいいな。
読了日:9月19日 著者:麻生 みこと
テレビの日本語 (岩波新書)テレビの日本語 (岩波新書)感想
言葉そのものよりも、テレビにおける言葉の担い手であるアナウンサーに焦点が当てられている気がする。テレビにおけるニュース番組の歴史を概観するにはちょうどいい本かもしれない。タイトルにある日本語の観点からは、ことばの揺れに着目している。ことばの揺れを「乱れている」と一概に否定しない点は評価できる。ただ、著者はNHKのアナウンサー出身であり、正しい日本語の伝え手として矜持もあちこちに見受けられた。
読了日:9月19日 著者:加藤 昌男
極北極北感想
訳者である村上春樹が絶賛しているから読む前はバイアスがかかっていた。が、読み始めたらそんなことは関係なしに物語世界に引きずり込まれた。メイクピースの生への執着の強さ、そして物語の重厚さに圧倒されてしまった。また、素材としては近未来小説になると思う。しかし、東日本大震災を経験した後で読んだせいか、物語の世界観がより切実に感じられるようになった気がする。
読了日:9月17日 著者:マーセル・セロー
55歳からのフルマラソン (新潮新書)55歳からのフルマラソン (新潮新書)感想
タイトル通り、55歳から走り始めた著者の想いを綴ったエッセイ風の文章が集められている。自分がランニング初心者だったころに感じたようなことが書かれている。これから走り始める人向けの本だと思う。詳しいトレーニング理論とかは書かれていないので、ある程度以上真剣に取り組んでいる人の参考にはならない。一点だけ、禅とランニングの関係は納得できない。ファンランならともかく、練習やレースでは走ることに集中しないとタイムを出せないと思う。
読了日:9月13日 著者:江上 剛
猫弁と透明人間猫弁と透明人間感想
対人関係がぎこちない性格の百瀬や沢村、一方妙にテンションの高い七重など登場人物たちになかなかなじめなかった。シリーズ2作目なのに変な感じ。それでも、読み終えるとなぜか温かい気持ちにさせてくれる所がこのシリーズのよいところか。透明人間をめぐる本筋よりも、百瀬と大福の不器用な二人の関係の方が気になってしまった。このラストだとまだ続編が出るんだろうな。いろいろ文句を言いつつも読んでしまうと思う。
読了日:9月12日 著者:大山 淳子
職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)感想
業界としてのAV、特にその主役となるAV女優たちの姿を、著者の長年の経験を元に描いている。興味本意ではなく、その実態を正確に伝えることを重視している。AVが芸術性のある作品から商品に変化したことで業界は「健全化」したようだ。それもあってAV女優志願の女性が増えているんだろうけど、待遇がかなり低いような気がするのに何故って疑問はある。あと、自殺にいたったAV女優の話や引退後に苦しんでいる元女優の話が印象的だった。自分を認められた喜びとその反動のギャップが思いやられる。
読了日:9月11日 著者:中村 淳彦
贖罪の奏鳴曲贖罪の奏鳴曲感想
いきなり犯行現場から始まったんでホワイダニットだと勘違いしてしまった。実際はいくつもの事件が複合的に関係して物語を構築していた。加害少年の更生や弁護人のあり方などちょっと考えさせられるネタもあり、読みごたえのあるミステリーだった。主人公の御子柴も単なる悪徳弁護士ではなく、奥深いキャラクターだったし。御子柴以外では渡瀬刑事が印象的だと思ったら、別作品の主役級だったんだね。さて、Wikipediaではシリーズと書かれているけど、続編はあるのかな。
読了日:9月8日 著者:中山 七里
しあわせなミステリーしあわせなミステリー感想
人の著者によるミステリーアンソロジー。伊坂作品は一番完成度が高かったと思う。シリアスな態度でやっていることが妙な感じで笑わせてくれた。中山作品はこのネタなら長編にしてほしかった。一応楽しめるがダイジェストを眺めている展開だった。柚木作品は佐方検事の人柄の良さが感じられる。前から気になっていたシリーズのスピンアウト作品だけに本編も読みたくなった。吉川作品は初読み。内容的には書名に一番しっくりくる作品だった。部隊が京王線沿線なので、親近感があるのかも。美味しいドルチェを食べたいなあ。
読了日:9月6日 著者:伊坂 幸太郎,中山 七里,柚月 裕子,吉川 英梨
ひらいてひらいて感想
全編にわたり美雪とたとえの深いつながりを感じることができる。そこに割り込もうとする愛のときには暴走する思考や行動を見ていると、痛々しくもあり、切なくもある。この物語を第三者視点で描けば、普通の純愛+失恋物語になりそうな気がする。愛の視点で描写されているので、愛の気持ちをより強く感じ、不安定な気分で読み進めることができた。冒頭とラストの瞳の描写が印象的だった。愛はたとえに対する呪縛から抜け出せるのだろうか。
読了日:9月5日 著者:綿矢 りさ
ニコニコ時給800円ニコニコ時給800円感想
時給800円で働く人たちっていうと一歩間違えば、蟹工船のような暗いリアリズム作品になってしまいそう。だけど、この作品に登場する人物たちは屈託なくポジティブに生きており、生活の困窮さを感じさせないところがいい。キノシタやリュウセイのようなクールな感じの人物が好きなんだけど、この作品の主役はやっぱりカザマ店長でしょう。彼のテンションの高さが作品の雰囲気を支配していると思う。全体的に楽しく読めたけど、その3とその4は落ちがいまいちすっきりしなかったのが残念だ。
読了日:9月4日 著者:海猫沢 めろん
カラット探偵事務所の事件簿 1 (PHP文芸文庫)カラット探偵事務所の事件簿 1 (PHP文芸文庫)感想
謎とき専門の探偵社を自称するように、どの話も凝った謎が持ち込まれる。どれも日常の謎なんだけど、しっかり読ませる。ただ、各話にはびっくりするような驚きがなく、ちょっとものなりなさも感じていた。と思ったら、ラストにしっかりどんでん返しが用意されていた。またやられたと思いつつ、「三つの時計」だけ読了後すぐに読み返すことになった。古谷と井上の人間関係に微妙なものを感じていたけど、しっかり仕掛けが用意されたいたんだ。このシリーズは続きがあるけど、どんなサプライズを提供してくれるか楽しみ。
読了日:9月3日 著者:乾 くるみ

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